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【読書】アップルのジョブズが愛した禅僧、破天荒な生き様とは

スティーブ・ジョブズの成功を後押しし、アップルの設計思想に影響を与えたとされる禅僧をご存知だろうか。名を乙川弘文という。ジョブズが20歳の頃から深い信頼を寄せ、弘文が急逝した時にはさめざめと泣いたらしい。だが、ジョブズのように心酔する者もいれば「僧侶らしくない」と毛嫌いする関係者もおり、実に謎の多い人物であるようだ。


宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』は、そんな弘文の素顔に迫ったルポルタージュ。日米欧の宗教家、シリコンバレーの住人、遺された家族など、弘文に縁のある30名に7年がかりで取材し、得られた証言が収められている。証言の食い違いを解き明かして弘文の実像に迫る様は推理小説のようだ。著者の柳田由紀子氏は在米のジャーナリストで、ジョブズと弘文の交流を描いた『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ
集英社インターナショナル)を翻訳した縁で弘文に惹きつけられたという。

ヒッピー文化の洗礼

弘文は1938年に禅宗曹洞宗)の名刹に生まれ、大本山永平寺の幹部候補生として仏道を歩む神経質で優秀な青年だった。29歳で米国の禅道場から乞われたときは、仏教を広める意欲に燃えていたようだ。


だが弘文が渡米した当時(1960年台)の米国は、ドラッグ、フリーセックスなど何でもありのカウンターカルチャー全盛期。禅に傾倒したのはヒッピーやジャンキーだった。そしてエキゾチックな禅僧を女性の修行者が追いかけるありさまだったという。そのうち弘文は取り巻きの1人と交際するようになる。「一生不犯を通す」(異性と交わらない)と誓った弘文だったが、米国のカルチャーに流されてしまったのか。


著者は「流された」のではなく自ら「流れた」のだと読み解く。根拠は、女性と別れた後、一ヶ月も山小屋に籠り、人との接触を断った「弘文引きこもり事件」だ。この引きこもり事件の後、結婚したり、酒へ依存したりするなど、日本での弘文とは「反転」するような生き方を選ぶようになった。なぜ引き籠ったのかは定かではないが、この事件こそ、弘文の人生上重要な意味があったのではないかと著者は推測する。


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あるがままに受け入れる

弘文は山小屋でこう考えたのではないか。様式化された伝統的な禅にこだわっていては、米国の人々には通じない。日本で思い描いていたきれいごとでは、混沌とした目の前の現実を救えない。これまで抱いてきた価値観と自我を手放し、米国の風じんに身を任せよう、と思ったのではないだろうか。


新しいものの見方に目覚め、人生観が転換する体験を仏教用語で「転依」(てんね)いうそうだ。弘文は山小屋で転依を経た。弘文と修行をともにした永平寺の高僧などの証言をもとに、著者はこう結論付けるのである。


ジョブズも、アップルを追放されていた時代に、他人の意見を拒否するスタイルから、自分を取り囲む世界をそのまま認めるスタイルへと転換したことが知られている。自分のこだわりを捨て、外の世界をあるがままに受け入れる。弘文とジョブズ、お互いを結び付けていたのは転依に向かう極端な、純粋な魂だったのかもしれない。


ではまた。 See you next time・・・


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【超訳】「組織サバイバルの教科書 韓非子」現代を生き抜くエッセンスとは

視野を広げる必読書

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現代の法治国家につながる『韓非子』の思想

諸子百家と聞くと、日本では「論語」で有名な孔子儒家、そして老子荘子の「老荘思想」で知られる道家を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。もしくは、NHK大河ドラマ真田丸」で、少ない軍勢で徳川の大軍を退けた真田昌幸が兵法を学んだという、孫子(兵家)も人気が高いに違いない。


では『韓非子』はどうでしょう。きっと、名前を聞いたことはあるがどんな思想かまでは知らない、という人が圧倒的に多そうである。


諸子百家とは、中国の春秋戦国時代(紀元前770年から紀元前221年)に現れた学者(諸子)や、その学派(百家)の総称である。
韓非子』は、春秋戦国時代末期に活躍した韓非という人物が法家の思想を集大成して著した書物の名称。春秋戦国時代を終わらせ、中国を統一した秦の始皇帝もその一部を愛読していたそうです。


始皇帝は、中央が選任・派遣する官僚が治める郡県政による中央集権体制を樹立し、度量衡の統一などさまざまな「法」を制定した。この国家体制のベースになったのが『韓非子』の思想なのだ。


現代日本のような法治国家では、法律にもとづき公正な政治が行われることが何よりも大切だ。その意味で『韓非子』は、現代の法治国家のルーツを知ることができる書物であり、現代人にもっと親しまれてもおかしくないはずなのだ。

本書の著者の守屋淳氏は、作家であり中国古典研究家。早稲田大学第一文学部を卒業後、大手書店勤務を経て現在は中国古典、主に『孫子』『論語』『老子』『荘子』などの知恵を現代に生かすことをテーマに、執筆活動や企業での研修・講演などを行なっている。


守屋氏は本書で、『韓非子』で説明されている法家の思想を、『論語』にまとめられた儒家の思想と対比させながら、わかりやすく解説している。


本書では、両者の違いを生み出した要因の一つに、孔子と韓非がそれぞれ生きた時代の間に200年ほどのずれがあることを指摘。二人の思想の違いは、その時代に求められていた組織や国のあり方が異なることによるものと説明している。いったいどんな時代背景が、この対照的な二つの思想を生んだのだろうか。

ムラ社会的組織から脱却し、競争に勝ち残るための思想とは

孔子が生きたのは、春秋戦国時代中頃の群雄割拠の時代だ。この時代は国同士の戦いというより、むしろ各国内の貴族同士の争いが激化していた。伝統的な身分制度は崩壊し、下克上も頻繁に行われていた。孔子はこの時代に身分制度を復活させ、戦いをやめさせて平和な世の中をつくるにはどうすればいいかを考えていた。


論語』に描かれているのは、人民の尊敬を集め、平和な国や組織を維持する理想的な政治家・統治者像であり、常に善き行いをする人民像だ。孔子がめざしたのは、トップも部下も徳を高めながら互いに助け合い、育み合い、生かし合うような組織づくりだった。


守屋氏は、いわゆる「日本型経営システム」を作り上げた日本人の組織観は『論語』の価値観を背景にしていることを指摘する。それが明治維新や大戦後の混乱を一致団結して乗り越え、今日の繁栄を実現するのに役立ったのは確かだろう。


しかし、お互いを信頼して助け合い、育み合う組織は、ともすれば内向きである”ぬるい”ムラ社会的組織に陥る危険性もある。下は上の言う事を絶対に正しいと信じ込み、上は下に仕事を丸投げしてその誤りを正しすことを避け、責任逃れをする。そんな組織だ。


例えば、三菱自動車の燃費不正事件、東芝粉飾決算といった、相次いで明らかになった企業ぐるみの不祥事は、いずれも日本型経営システムの欠点によるものだろう。危機に対して毅然と対処できず、内向きな組織維持のロジックに偏りがちだったのだ。

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一方、孔子から200年後の春秋戦国時代末期は、中国統一に向けて国同士が最後の生き残りをかけてせめぎあった時代だ。韓非が集大成した法家の思想は、大国同士の激烈な戦いの世を生き残るためにムラ社会的な馴れ合いを廃し、確実に成果を出せる引き締まった組織をつくるためのものだ。


韓非は、「虎や豹が人に勝ち、百獣を思うがままにできるのは、爪や牙を持っているからだ」と説き、爪や牙に相当する「法に基づく権力」で国や組織を統治するシステムを考案した。
また韓非は「名君は、二本の操縦かんによって臣下を統制する」とも言っている。「二本の操縦かん」とは、善い行いをして成果をあげた者には「賞」を与え、法を守れない者には「罰」を下すという、二つの権限のことだ。韓非は、トップがそれらを握ることで、臣下や人民を操れるようにすべきだと考えた。


さらに韓非は、「君主と臣下とは、一日に百回も戦っている」と言う。法家は、君主と家臣は馴れ合う関係ではなく、権力を巡って戦う関係とみなしているのだ。


現代の会社組織で、部下の一人が単に権力を握りたいがためにトップを追い落とそうとすることもあるだろう。守屋氏は韓非の思想をもとに、そうした事態を防ぐための注意点をまとめている。具体的には、組織内の権力構造やボトルネックをあらかじめ熟知しておいく、そもそも権力欲の強いタイプを上のポジションに置かない、と言ったことだ。これらの注意点を参考に、いちど自社の権力構造を分析してみるのも良いだろう。


韓非子』は、日本型経営システムの欠点であるムラ社会的組織体制を改め、トップがしっかりと操縦かんを握った上で競争社会を生き残るための指南書と見ることもできそうだ。


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徳治と法治のどちらかだけでは矛盾が生じる

ところで「矛盾」という、現代の用語でもひんぱんに使われる言葉のもとになった故事成句が『韓非子』の出典だということをご存知だろうか?矛盾とは、「どんな盾(たて)も突き通す矛(ほこ)」と「どんな矛も防ぐ盾」を売っていた男が、客から「その矛で、その盾を突いたらどうなるのか?」と問われ、返答できなかったという話だ。


この話は、もとは儒家が唱える「徳治」を理想とする政治体制の矛盾を、韓非が指摘するために用いた例え話なのだ。


そもそも、『論語』に記された王のあるべき姿は、相当に徳の高い人物でなければ務まらない。一時期そういう王がいたとしても、次の王に同じように徳の高い人物がなるとは限らない。代替わりを繰り返すうちに徳治の理想は形骸化し、単なる馴れ合い組織に陥ることも多い。そうなるとやがて人心も離れていく。


一方、韓非の唱える「法治」にしても、賞と罰をバランスよく使いながら人々の士気を高められている間は良いが、やがて賞の原資がなくなったとしたらどうだろう。善い行いをしても賞はもらえず、失敗した時の罰ばかりがくだされるようになる。


現代の企業で言えば、いくら業績を上げてもボーナスも昇給もないのに、ちょっと失敗しただけで罰金を取られたりクビになったりするようなものだ。そうなると安心して働くことはできない。不満が溜まり、韓非の時代であれば「謀反でも起こしてみるか」と考える輩も出てくるだろう。法治も万能ではなく、徳治と同様、矛盾を抱えているのだ。


結局、徳治と法治が対立すると考えるところに間違いがあるのではないか。完璧な矛も、完璧な盾もありはしない。矛と盾の両方を上手く使わなければ戦いに勝つことはできないのだ。同様に徳治、法治のどちらか一方ではやがて矛盾が露呈し、うまくいかなくなるということだろう。


例えば秦王朝に続く、漢王朝も基本的には法治を採用した。しかし、放置一辺倒の統治の問題点に気がつき、儒家の思想も一部導入した。法治と徳治を併用する体制をとったのだ。


佐藤優氏の著書『交渉術』(文集文庫)には、「制度は性悪説、運用は性善説」との記述がある。守屋氏はそれを法治と徳治を併用する際の基本的な考え方を説明するために引用している。制度を確定するための法は人を信じないスタンスできびしくつくる。大きな問題が無ければ人を信じ、温厚重視で柔軟に運用する。


しかし、何か本当に改めるべき問題が見つかった時には人が変わったように非情に断罪する。組織をうまくまわすには、トップにそんな二面性が求められるという。


本書を読んで『韓非子』と『論語』の違いを理解し、両者の考え方を状況に合わせて併用できるようにしておくことが、特に組織で人の上に立つ者に必要な知恵と言えるだろう。


古の傑物たちの叡智をかりて、この複雑極まりない現代を生き抜いていきましょう。



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【読書】説明がわかりやすい人がやっていること、相手に伝える簡単なテクニック

『「説明がうまい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(ハック大学 ぺそ著 アスコム)では、「上手な説明」ができるようになるためのメソッドを明かしてくれています。

上手な説明ができるようになると、「この人はすごいな」「この人なら、大事な仕事を任せても、きっと上手くやってくれるに違いない」と、結果を出す前に評価が上がるのです。
そう、説明が上手くなるということは、単に「話が通じやすくなる」ということを超えて、あなた自身の「価値」を周囲に認めさせるツールにもなっているということです。(「はじめに」より)


言い換えるなら、説明が上手くなることは、最高のブランディングだということ。説明力で自分のブランド価値を上げることができれば、説明がさらに説得力を持つという好循環を作り上げることが可能になる。さらにはそれが信用・信頼へとつながっていくわけです。


ちなみに重要ポイントは、「自分が何を伝えたいか」ではなく「相手が何を知りたがっているか」です。それが理解できると、何を話せばいいのか、何を調べておけばいいのか、どんな話を準備するといいのか、などを逆算できるようになるからです。


こうした考え方に基づく本書の2章『「結局、何が言いたいの?」と言われなくなる方法』の中から、「魔法のようにわかりやすくなる説明の4ステップ」に焦点を当ててみていきたいと思います。

取引先A店の売上改善策を上司に打診するシーンで


今日、A店を訪問したのですが、最近あの店、ちょっと気になっているんです。売上が少しずつ落ちてきているので。何かしらの対策が必要だと思うのですが、ポイントカードの導入はどうでしょうか?B店でも、それで成功していますし・・・。(44ページより)

著者によればこの説明は、自分の頭に浮かんだ順序で話しているとのこと。そのため結論が分かりにくく、聞いている相手も先を読みにくいのです。

⭕️
A店にポイントカードを検討できませんか?今日も訪問しましたが、最近売り上げの減少が顕著なので、てこ入れの必要がありそうです。ちょうど、B店でポイントカードを導入した成功例がありますので、A店にも導入してはどうでしょう?(45ページより)

対するこちらは、結論が最初に示されています。したがって話の趣旨や話す目的がすぐにわかり、検証や判断をスムーズに行えるわけです。(44ページより)

話が分かりやすくなる説明の4ステップ

「だからなんなの?」と言われない説明、内容が正しく伝わりやすく、相手もストレスなく受け入れやすい説明には、大きく3つの特徴があるそうです。

①・順序が理にかなっている
②・数字やデータを使用している
③・早く、簡潔で、効率的
    (46ページより)

この中から、①の「順序が理にかなっている」をクローズアップしてみましょう。
大切なポイントは上記のように「結論から話す」ことで、そのもとになっているのが「PREP法」です。

「PREP法」とは、P=Point、R=Reason、E=Example、P=Pointの頭文字から取ったもので、説明や話の順序をわかりやすくする4ステップを示した、いわば「鉄板」の法則です。ビジネスに代表される「正確に」「素早く」伝えるべき説明の場面では、PREP法を理解し、説明したい内容をPREPの4つに分解するだけで、魔法のように説明力が上がります。


最初のPは「結論」、Rは「その結論に至る理由」、Eは「理由の具体例や根拠」、最後のPは「結論」。つまり説明はまず「結論」から始め、「結論」で終えればいいということです。

順序を変えるだけで評価されやすくなる

上記の「取引先A店の売上改善策を上司に打診するシーン」での良い例と悪い例を比較してみると、説明している内容はほぼ同じで、ただ順序が違うだけだということがわかります。しかし両者には、相手からすれば決定的な違いがあるというのです。


「A店にポイントカード導入を検討できませんか?」と冒頭ではっきり結論が示されると、相手は「なるほど、この人はこれからその結論に向かって説明するんだな」と理解して聞き始めることができます。


なお、ここで重要なのは、相手にとってその結論が正しいか、期待通りか、同意できるか、はとりあえず関係ないということです。


相手にとっては、提示された結論の理由や根拠を精査することが何より重要であるわけです。(47ページより)うまい説明力は、誰でも身につけることができると著者は断言しています。コミュ力は関係なく、ましてやセンスなども不要だと言います。


しかも結果を出す前に自身のブランディングができるので、「こんなにコスパのいいメソッドは他にない」というのです。だからこそ本書を参考にしながら、是非とも説明力を身につけたいものです。

説明がうまい人」がやっていることを1冊にまとめてみた」(ハック大学 ぺそ著 アスコム

【才能】理論的に証明された『粘り強さ>才能』の事実。やり抜く力はいかにして育てられるのか?

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何かを成し遂げるのにもっとも必要なのは「才能」ではないことが、アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース教授によって理論的に証明された。


ダックワース氏は、ハーバード大学を優秀な成績で卒業後、マッキンゼー経営コンサルタントを経て心理学者となり、2013年には将来のポテンシャルに対して贈られる「マッカーサー賞」別名「天才賞」を受賞した人物だ。


彼女の研究対象は「GRIT」、すなわち「やり抜く力]」についてである。


そして、その研究成果をつづった著書「やり抜く力 GRIT(グリット)人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」は、すでに20万部を超えるヒットとなり注目を集めている。


「天才賞」を受賞したダックワース氏だが、人生の成功に大切なのは「才能」ではなく、「情熱」と「粘り強さ」である、と述べているのはとても興味深いところだ。


著者の研究は、米国陸軍士官学校から始まる。士官学校には候補生として、知力体力ともにとても優れた1万4000人以上が集まり、最終的に1200人が入学を許可される。ところが、せっかく厳しい競争を勝ち抜いてきたにもかかわらず、多くの候補生が入学直後に辞めてしまうのだ。


では、どのような人物なら過酷な訓練を耐え抜けるのだろうか?


その疑問を研究テーマにして、ダックワース氏は調査を開始した。学校側は各志願者の知力や体力、リーダーとしての資質などを分析した「総合評価スコア」を算出していた。だが、そのスコアの優劣は厳しい訓練を乗り越えられるかどうかとはまったく関係がなかった。


そこで彼女は、「やり抜く力」を測定するための「グリット・スケール」というテストをつくる。


すると、結果を出せるか否かは「スキル」や「才能」よりも、「情熱」と「粘り強さ」を持っているかどうかにかかっている、という事実にたどり着いたのである。

「やり抜く力」を測る「グリッド・スケール」

ダックワース氏が「やり抜く力」を測るために作った「グリッド・スケール」とは、「情熱」と「粘り強さ」の2つの要素をヒアリングするためのテストだ。


全部で10個の質問があり、それぞれに「まったく当てはまらない」〜「非常に当てはまる」までの5段階評価で答える。


各評価には点数が振られており、その数値が高いほど、「情熱と粘り強さ」=「やり抜く力」がある。と言えるのである。


ダックワース氏は、士官学校の調査と並行して、この「グリッド・スケール」を使ってさまざまな職種や集団への調査を行った。


例えば、営業職の数百名の男女を対象にした調査では、半年後には55%の人間が仕事を辞めていた。しかし、「グリッド・スケール」のスコアが高かった人たちの離職率は低く、辞めていった人はほとんどがスコアの低い人たちだった。


また、公立高校での調査でも、退学者は一様にスコアが低いことが実証されたし、スコアが高い人ほど、修士や博士、医学士などの大学院の学位を取得する率が極めて高かったのである。


本書には実際の「グリッド・スケール」の設問が載っているので、自分の「やり抜く力」を測りたい人は、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。

「やる抜く力」を伸ばす方法

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本書は、一貫して「才能」よりも「情熱」と「粘り強さ」の大切さを説いている。それだけでは単なる自己啓発本となんら変わりはない。


だが、安心してほしい。「情熱」と「粘り強さ」を伸ばし、「やり抜く力」を高める方法も著者は提示している。むしろこちらが本書の百眉と言ってもいいだろう。

その方法は大きく分けて2つある。


ひとつは、自分自身で「内側から伸ばす方法」。「興味を掘り下げる」「自分のスキルを上回る目標設定をして、それをクリアする練習を習慣化する」「自分の取り組みと大きな目的とのつながりを意識する」「絶望的な状況でも希望を持つことを学ぶ」。この4ステップの具体的、かつ実践的な方法が提示される。


もうひとつは、周りの人たちによって「外側から伸ばす方法」だ。こちらは、子どもの素質を伸ばしたい親にとっても重大な関心がある部分だろう。どうすれば、相手の「やり抜く力」を育んでいけるかが紹介されている。


能力があっても「やり抜く力」がないために結果が出せないのは、自分にとっても周りにとっても不幸でしかない。仕事で結果を出したい人、「才能」という言葉にとらわれている人にとって、本書は非常に役に立つ1冊となるだろう。

【読書】知の巨人・外山滋比古の「思考体系」を盗もう

こうやって考える

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ぜひ、週末のひとときで新たな知識を手に入れてほしい

この本から学べる事

本書は「思考の整理学」で知られる「知の巨人」、外山滋比古の金言集だ。これまで外山氏が出版した書籍のエッセンスが、150の言葉に濃縮されている。どれもこちらの発想や思考を刺激するものばかりで、眺めているだけでも十分に楽しい。本書は多くの気づきと着想をもたらしてくれるため、何度も咀嚼しながらじっくりと味って欲しい。そんな味わい深い1冊である。

発想力を鍛える

いたずらに情報や知識を集めて喜んではならない。大切なのは自分にとって未知のものを見つけ出し、それをもとに自分の「知見」を創出することだ。


ただし未知のアイデアを正面からつかまえ様としても、なかなか一筋縄にはいかない。


とにかく何かに対して一心不乱に努力しよう。精神が研ぎ澄まされているときにこそ、予想外のアイデアが舞い降りてくる。


また失敗のなかにも、多くの素晴らしいアイデアが詰まっている。たとえば化学には失敗がつきものだが、失敗の中には新しい発見も多い。


セレンディビティ(思いがけないことを発見する能力)とは失敗、間違いの異名なのだ。


さらに場所も重要である。かつて中国の欧陽脩(おうようしゅう)は、文章を練る際にもっとも妙案が浮かぶ場所として、三上(枕上、鞍上、厠上)をあげた。


他のことをしているときにこそ、精神は最大の自由を獲得するものだ。そして予想もしなかった名案が浮かぶのも、まさにその瞬間なのである。

思考力を高める

知識から思考が生まれることはほとんどない。仮に生まれてきても、それは小粒で非力なものだ。


なぜなら思考とは、生きている人間の頭から生まれるものだからである。ゆえに研究室で本を読んでいる人は思考に適さない。生活が貧弱だからだ。


たしかに知識は「力」である。だか知識が多くなると、自分で考えることをやめてしまう。


極端にいえば、知識の量に反比例して思考力は低下する。本を読んで得られる知識は過去形のものばかりだ。もちろん使えるところはあるが、それだけでは不十分である。


どうしても現在形の思考力や判断力が求められる場面はある。そういうときに、死んだ知識は役に立たない。


重要なのは常に問い、疑うことだ。自分にとって新しいことに遭遇したら、自問してみるとよいだろう。


常識になっていることに対しても、「ホントにそうだろうか」と問いかけてみるべきである。ただし、こうした問いかけ方は少し具体的すぎる。


さらに自由な思考をするためには、「なに」や「なぜ」を問うだけでは不十分だ。未知を考えなければならない。



本は読みっぱなしにせず、あとでかならず感想を書くようにすべきだ。書くことは面倒なことだが、頭脳をよくするもっとも優れた方法なのだから。


思いついた事を書く際は、手帳を活用するのがオススメである。手帳のメモに思いつくまま書きつけていこう。


書きっぱなしでは面白くないので、少し時間を空けたら見直してみる。そうすると、もっとおもしろいアイデアが生まれることもある。


新しく生まれたアイデアは、用意したノートへ移してあげるのがいいだろう。


このとき、雑然とメモを並べるのではなく、通し番号をつけておくと参照する際に便利である。記入した日の日付も加えておくと、思わぬ瞬間に役に立つ。
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学者にかぎらず、何か一つだけに打ち込んでいる人にはどこかおかしなところがある。


純粋すぎるのは考えものだ。人間は多少、不純なぐらいがちょうどいい。清濁併せ持つ人間こそ大きくなれる。人生を豊かにするためには、わき道にそれることも必要だ。


「純粋であることはいいことだ」と私たちは教育されてきたが、むしろ雑は純一(じゅんいつ)よりも豊かなのである。


著者も若い頃、勉強の方向性を見失った時は、他分野の同輩との雑談に興じたものである。


そうすることで、小さな専門の外に大きな知の世界があることを知り、勉強が面白くなった。


ときには自分の専門ではないものみ触れてみることも、オリジナルな考えを生み出すのには必要不可欠なのだ。


そういう意味では、旅行も大切である。日常からの離脱こそが創造につながる。


「住めば都」という言葉があるが、知的環境という意味だと同じ環境にいつづけるのは好ましくない。


同じ場所に住み続けると、見えなくなるものがある。旅人の視点を持つべきだ。

知性を磨く生活

日常生活を見なおすことなくして、知的な生活を送ることは不可能だ。すべては一日をどう生きるかによって決まってくる。知的生活という言葉のイメージにとらわれてはならない。


新しい思考をするためには、机に向かうのではなく、外に出てあてどもなく歩くことが効果的である。歩くことの恩恵は大きい。


他の事をしているときよりも、アイデアが湧き上がってくる。散歩に出るときは、メモ用紙と筆記用具を持って出るべきだ。


散歩以上に頭の働きをよくしてくれるかもしれないのが料理である。


料理をしていると、毎日のように小さな発見がある。料理は創造的な営みだ。あとは食べて褒めてくれる人がいれば最高である。


頭を働かせるうえでは、姿勢にも気を配りたい。いちばん合理的な姿勢は立つことだ。座っている時も、背筋をピンと伸ばして姿勢をよくするよう心がけよう。


成績の良い生徒は、たいてい教室で姿勢を正して座っている。そういう姿勢の方が、学んでいることが頭に入りやすい。


さらに笑いにも、頭をよくする効果がある。くよくよしたり、泣いたりしてはいけない。笑うことは知的な振る舞いだ。よく笑うのは頭の回転がはやい証拠である。

人から与えられた仕事は、どんなに難しいように見えても、じつは思ったりもやさしいものだ。


覚悟さえすれば、たいていのことはやりとげられる。一方、自分からやりたいことには決まった締め切りがないし、催促する人もいない。しかも当面の間は利益も出ないだろう。


ライフワークとは、こういう仕事を考え予定にのせ、成し遂げる事を指す。予定表をつくることの意義は、こうした大仕事を成し遂げやすくすることだ。


この点において、予定表は日記よりも優れている。日々の予定、計画はしっかりと立てるべきである。


とはいえ日記を書くことにも利点はある。忘れようと思ってもなかなか忘れられないことでも、日記に書けばあっさりと忘れられる様になる。


日記の主目的は記録することだが、実際には安心して忘れられることにメリットがある。


なお日記を付けるのは、翌朝になってからの方がいい。一晩寝ているうちに頭の中で整理できているからだ。


人はレム睡眠時に、それまで頭に入ってきた情報を処理する。朝目覚めたとき、頭がすっきりしている感じになっているのはそういうわけだ。


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頭を使った仕事をする人にとって、朝は金の時間だ。朝ベッドで目が覚めたら、あれこれ空想してみると思わぬアイデアを思いついたりする。


枕元に、メモ用紙とペンを置いておき、良いアイデアが浮かんだらすぐにそれをメモに残す様にしよう。そうすると妙案と思われるものがいくつも飛び出してくる。


基本的には夜の頭よりも、朝の頭の方が優秀だ。夜できなかったことに朝もういちど取り組んでみると、あっさりとできてしまうこともある。朝飯前の仕事こそがすべてだと心得よう。


ただし朝飯を食べた瞬間に、金の時間鉄の時間に変わってしまう。そうならないための工夫として、ブランチの導入が考えられる。


朝飯と昼食を一緒にしてしまえば、午前中がすべて朝飯前になるからだ。


医者は健康のために朝飯を取れと教えているが、頭をうまく使うためには、朝と昼の食事は合併させて方がいい。


昼食を食べると今度は鉛の時間が訪れる。こういう時に無理をしても成果は出ないため、昼食後にはできれば昼寝で少しの仮眠をとる様にしよう。


昼寝の後はセカンドモーニングであり、ふたたび新しい1日が始まる。これは銀の時間にあたる。



夕食後になるともはや鉛を通りこし、夜10時以降ともなれば石の時間になる。「夜型」と称し、夜に作業してはならない。


そんな時間から頭を使えば、たちまち石頭になってしまう。


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勉強家は絶え間なく仕事をしようとする。しかし効果を上げる継続は「休み休みの継続」だ。


つまり線的な継続ではなく点的な継続が力を生むのである。同じところで同じ作物を作ると連作障害を起こしてしまう。


それならば休作をして、他のものをつくった方がいい。スイッチの切り替えを素早くできるのは、現代人に必要不可欠のスキルだ。


それさえできていれば、どんなに多くのことを同時にやっても混乱しなくなる。ただし頭を切り替える際には、少しでいいから空白の時間も必要である。


すぐに次に移るのは良くない、何もしない時こそ、頭は大いに働いているのだ。

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思考につながる読書

読書は生きる力に結びつくかたちでなければならない。新しい文化を生み出す志がなければ、教養は不毛なだけである。


本を読む目的は、よりよく生きるため、そして新しいものを生み出すためだ。


著者に敬意を持つのは当然だが、盲目になってしまってはならないし、まねる様なことも望ましくない。


むやみに愛読書をつくって得意げになるのは、精神が弱い証拠である。創造力のある頭をつくるには、手当たり次第の読書が役に立つ。


わからないところがあったら飛ばせばいいし、おもしろいところがあったらじっくり付き合えばいい。こうした”乱読”こそが、思いがけない発見をもたらしてくれる。


なお本は、読み捨てにしてかまわない。本に執着することは知的ではないからだ。ノートにとる必要も基本的にはないだろう。


本を読んだら、あとは忘れるにまかせる。心に刻まれないことをいくら記録しても、なんの価値もない。


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何度も読める本がある。それは自分の考えを引き出してくれるからだ。わからないところに遭遇した時、人は自分の理解で補完する。それは一種の自己表現だ。


わかりきったことしか書いてない様な本がつまらないのは、読者の参入余地がないからである。


これはと思った本は、一度読むだけで満足してはならない。忘れた頃にもう1度読んでみる。3度、5度読んでも新しい発見と感銘のある本こそが、「我が人生の本」となる。


こういう本が3冊もあれば、りっぱな読書人だと誇って良い。逆に読んだ本の冊数を誇ってはならない。


思考能力を弱める読書は有害そのものである。心を育むような本をじっくり味読するべきである。

【解説】3分でわかる孫子の兵法 / 戦略、戦いを避けながら弱者が強者に勝つ

孫子の兵法」は現代に応用できる

兵法とは「戦いのノウハウ」ですが、基本的には理詰めであり、ロジカルシンキングです。そのため、いつの時代もあらゆる分野で使うことができます。
いくつかの事例を交えて見ていきましょう。

目次

ビジネスに応用できる「孫子」のスキル

孫子」は、ビジネスの世界でもスポーツの世界でも、人生においても、多くの人たちが学び参考にしています。松下幸之助さんは「孫子」を暗誦していたと言いますし、ビル・ゲイツは座右の書にしていると言います。

一般的には断片的に名言が切り取られて語られることが多いようですが、本来は戦い方の要諦をまとめたものです。

国は滅べば終わりです人は死ねば生き返りません戦争はやり直しが効かないのです。ですから、戦争には細心の検討をもって臨べきでしょう。「孫子」とは、そんなやり直しの効かない戦争で構築されたノウハウです。

ビジネスはよく戦いに例えられます。競合他社がひしめくなか、限られた資源を配分しながら成果をあげていかなければなりません。そう考えると、確かに、ビジネスと戦いはよく似ています。
生きるか死ぬかの真剣勝負の中で磨かれた「孫子」のスキルは、ビジネスという名の戦争の中で大いに応用できるのです。

人生の転機に中国古典を読もう

私は人生で悩んだ時には、いつも書籍からヒントを得ているように思います。会社の中や人生の分かれ道に立たされた時に、まずは少しでも関係性がありそうな本を読もうと決めています。


色々調べていくうちに、多くのリーダーたちが読んでいるのは「菜根譚」や「老子」など、中国古典と呼ばれるものだったのです。その中でも圧倒的に支持されているのが「孫子の兵法]」でした。


戦略を説く「孫子の兵法」を読み進めていくと、仕事に大いに役立つことがわかってきました。原文は難解なため、現代語訳で、しかも解説付きの本を探すと、守屋淳さんの『最高の戦略教科書 孫子』に行きつきました。

中国古典思想の権威と言えば守屋洋先生が有名ですが、その息子さんで守屋淳さんもまた「孫子」の研究をされています。親子の共著もあり、中国古典を学びたい人におすすめです。

最善の策とは、戦わないで敵を屈服させること

百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」という言葉が「孫子」にあります。百戦戦って、百回勝っても、百回も戦えば資源や組織や自分自身もボロボロになります。下手をすれば漁夫の利をさらわれてしまうかもしれません。それでは、勝ったところで何もなりません。最善の策とは言えないでしょう。


同業者を敵を思わず、仲間だと思えばいいのです。訴訟などしないのが一番ですし、大手企業と張り合うと最悪は潰されてしまします。一緒にやることを模索することです。


これも孫子の「戦わずして兵を屈する」の教えに沿っています。

戦いを避けながら伸びていくこと

知り合いに、凄腕営業マンのMさんがいて引くて数多の大活躍なのですが、そのMさんに地方にいないで東京などの大都会で活躍する気はないのか尋ねて見たところ、彼は一切考えていないと答えました。「東京には優秀な人材が星の数ほどいて、自分が活躍できるかわからない」しかし「地元のナンバーワンになら頑張ればなれそうだから地元で戦わせていただいている」という答えでした。


彼も「孫子の兵法」の愛読者です。


ビジネスの世界にも強者と弱者がいます。弱者の最たるものが1人で起業した人たちでしょう。あらゆる分野で後発ですし、資源も限られています。Mさんがとった戦略は、大手企業や先行者らを研究し、相手が関心を持たないところを見つけ、戦いを避けながら伸びていくことだったのです。
Mさんの戦略もまさに「孫子の兵法」のスキルを実践しています。

孫子ロジカルシンキングはあらゆる分野に使える

孫子」の有名な言葉に「彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず」とあります。孫子はこのとき「敵」という言葉を使わず「彼」といています。この「彼」には「敵」以外の環境全てが含まれるとする研究者もいるので、ビジネスで言えば、ライバル会社だけでなく、政府の方針転換や市場の変化、消費者動向といったことを調べなさいという教えととらえることもできます。



さらに、「彼」よりも、「己」を知ることの方が遥かに難しいのではないでしょうか。自分が本当にやりたいことは何なのか、これを知らずにビジネスは始まらないと思うのです。多くの人は自分のことなのに、自分よりも外に答えを求めようとします。まずは静かな場所で自分に聞く時間を作るようにしましょう。


このように「孫子」のスキルはいくらでも現代に応用できるのです。兵法とは「戦いのノウハウ」ですが、基本的には理詰めであり、ロジカルシンキングです。ですから、時代を超えてあらゆる分野に使えるスキルなのです。

勉強にも、人間関係にも、家族内の交渉ごとにも十分対応できるのです。



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【読書】なぜアマゾンで「イノベーション」が生まれるのか

この本から学べること

<<アマゾンは、ジェフ・ベゾスの類まれなるアントレプレナーシップによって成長を続けてきた企業だ。そんなベゾスは2021年にCEO退任を発表。今後、アマゾンはどのように歩みを進めていくのだろうか。本書を読む限りではおそらく、アマゾンの繁栄はまだまだ続くだろう。なぜならアマゾンには、イノベーションを起こし続ける仕組みが強固に確立されているからだ。本書では、約六年間アマゾンジャパンに在籍し、新規事業の立ち上げに従事していた著者の視点から「アマゾンがイノベーションを起こすメカニズム」が体系的にまとめられている。


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なぜイノベーションが次々に怒るのか

本書の著者は、アマゾンジャパンで新規事業の立ち上げに従事していた。

そんな著者がアマゾンでイノベーションが生まれる理由をシンプルに表現すれば、「ベンチャー起業家の環境✖️大企業のスケール➖大企業の落とし穴=最高のイノベーション創出環境』となる。


本書では、この方程式を成立させている、アマゾンの「仕組み・プラクティス(習慣行動)」を分解して体系化することで、「アマゾン・イノベーション・メカニズム」として示している。


イノベーションを起こさせる仕組みや環境こそが、他社にないアマゾンの優位性となる「コア・コンピタンス」である。
このアマゾン・イノベーション・メカニズムは、日本企業でも十分再現可能である。

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普通の社員を「起業家集団」に変える

アマゾンでは、イノベーションを創出するための思考プロセスを「ワーキング・バックワード(Working backwards)」と呼ぶ。


逆方向に思考するという意味だが、つまり「顧客ニーズからスタートしてそのソリューションとなる製品・サービスを発案する」ことを指す。


その中核を担うツールが「FR / FAQ」と呼ばれる企画書だ。アマゾンで新たな製品・サービスを提案する際には、必ずこのフォーマットが用いられる。


PRはプレリリース、FAQはよくある質問や想定問答のことだ。

一般的にプレリリースは、サービスや製品を世に送り出す前に、自社のサービスや製品を宣伝するために出される。

FAQも、サービスや製品の情報がそろった後に、報道関係者や消費者から質問されそうな内容を想定して用意するものだ。


一方アマゾンでは、新しいサービスや新製品を企画するタイミングでこれらを作っている。

アマゾンのPR / FAQには、主に3点の要素が盛り込まれる。それは「どのようなサービス・製品が市場に導入されるのか」「使用する人にとってどんな利点があるのか」「実際使ってみた人にフィードバックはどうか」だ。


企画書を作るプロセスを通じて、企画立案者は顧客視点に立って企画をブラッシュアップすることができる。

そして提出されたPR / FAQを検討する際、チーム全員の視点よりも顧客中心のものとなっていく。


アマゾンでは、誰もがPR / FAQを作れるように工夫されている。まず、ほとんどの社員がPR / FAQを書くトレーニングを受けていること。


そして、そもそも簡単に作成できるようなフォーマットであることだ。分量としてはA4用紙で1ページほどの長さだ。数時間で書き上げることも難しくはない。

もし提案フォーマットがもっと複雑ならば、提出される企画の数は減ってしまうだろう。

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会議資料にも、アマゾンならではのルールがある。


「パワーポイントの使用禁止」「必ずワードファイルで1枚、3枚ないし6枚にまとめる」「箇条書きは禁止」「グラフ・図の使用禁止」「意見はすべて散文形式で表現する」というものだ。


会議冒頭で、出席者は配られた資料を黙読する。会議前に具体的な提案内容を伝えるのは禁止。


根回しや社内政治を許さず、まっさらな状態で本気の意見交換を行うためである。生産的な議論を経て、提案者が意見を変えることもしばしばある。


アマゾンには、ミドル層リーダーの意志決定スピードを上げるための問いがしばしば投げかけられる。


その問いとは、「それは、ワンウェイ・ドア(one-way door)」か、それともツーウェイ・ドア(two-way door)なのか」というものだ。


ワンウェイ・ドアは一歩通行のドアを、ツーウェイ・ドアは両方向のドアを指す。ワンウェイ・ドアの場合一度ドアを開けたら引き返せない。逆にツーウェイ・ドアは、部屋に足を踏み入れ、その結果が望ましくないとわかれば引き返すことができる。


これから挑むイノベーションがワンウェイ・ドアの場合、ドアの向こうに待ち構えるものを慎重に予測・検討すべきだろう。


一方、もしツーウェイ・ドアだと確信できれば、準備が不十分であっても恐れず進むべきだ。ドアを開けて、その先に何があるのかを知ること自体にも意味がある。


このシンプルな意思決定方法は、2つのメリットをもたらす。一つは、意思決定のスピードを限りなく上げられること、もう一つは、ミドル層のマネージャーに起業家精神を植え付けることだ。


大企業の「落とし穴」を回避する

大企業がイノベーションを起こそうとするとき、しばしば意思決定の複雑さや遅さが障害になるものだ。


そうした問題を回避するため、アマゾンにはさまざまな仕組みやプラクティスがある。その1つが「シグナル・スレッド・リーダーシップ」と呼ばれるコンセプトだ。


シグナル・スレッド・リーダーシップには2つある。


まず、戦略やリソースの使い方、プロジェクトの結果まで、すべてに対して1人のリーダーがオーナーシップを持つということだ。


もう1つは、リーダーは他の仕事を掛け持ちせず、自らのリソースをすべてプロジェクトに注ぎ込むというこただ。


つまりリーダーは、アマゾンという巨大な企業体における起業家のような存在になる。


電子書籍のビジネスをスタートさせる時、ベゾスはプロジェクトリーダーとして紙の書籍の事業責任者を抜擢し、その人物を紙の書籍の事業から外した。


電子書籍と紙の書籍の販売では、共通するノウハウも多いため、1人のリーダーの下に2つの事業を置いてもいいと思う人もいるだろう。


だがベゾスはそう決断しなかった。電子書籍という新しい市場で新しい顧客体験を生むためには、既存ビジネスの考え方は捨てた方がいいと考えたのだ。


いいアイデアが浮かんだが、既存事業とカニバリーゼーション(共食い)を起こすから踏み込めないーーこれも大企業ではよくあることだ。


一方アマゾンでは、新しいビジネスのアイデアに可能性を感じたら、たとえそれが既存ビジネスを陳腐化させるものであっても、ためらうことなく前進させる。


ベゾスが電子書籍ビジネスを本格的に立ち上げたのは2004年。


「紙の書籍の必要性をなくすくらいの気持ちで電子書籍ビジネスに取り組め」と指示を出したと言われている。


当時、書籍販売ビジネスは、アマゾンの中核事業に位置付けられていた。それでも、これから伸びるであろう電子書籍ビジネスに多くのリソースを配分したのだ。


たとえ既存ビジネスとカニバリゼーションが起きる可能性があっとしても、新規事業に全力で投資するのがアマゾンの流儀だ。


その姿勢が揺るぎないものであるからこそ、アマゾンはイノベーションが起こり続ける。

大企業のスケールを社内起業家に与える

大企業としてのスケールを生かし、イノベーション捜索につながる仕組みを日々回しているのは、アマゾンの幹部たちだ。


特に中心となるのが「Sチーム」と呼ばれる経営幹部である。Sチームのメンバーは各事業責任者を中心に構成され、社員によるイノベーション創出を支援している。


PR / FAQで提案したプロジェクトが承認されると、人事採用枠と予算が与えられる。


これらのプロジェクトには、既存のビジネスを改善する「持続的イノベーション」もあれば、既存事業を一気に陳腐化させるほどのインパクトを持つ「破壊的イノベーション」もある。


いずれの場合も、プロジェクトが顧客と会社に大きなインパクトを与えると判断された場合、Sチームが継続的にその進捗をレビューすることになる。


その際、「Sチームゴール」と呼ばれる四半期単位の目標が設定され、Sチームはその達成に向けて、プロジェクトメンバーをサポートする。


Sチームによるレビューでは、経営幹部からアドバイスやフィードバックが得られるほか、リソースの追加を依頼することも可能だ。


このような形でアマゾンは、大企業のスケールを生かし、人材や技術、資金をプロジェクト推進のために投資しているのである。


Sチームメンバーは、ベゾスのメッセージを繰り返し伝え、全メンバーの意識に浸透させていく役割も果たす。


創業者の分身として働くSチームの存在によって、ベゾスの思想が増幅し、組織文化として定着しているのだ。


2021年2月2日、ベゾスが2021年の第3四半期にCEOを退任して取締役会長に就くことが発表された。


退任発表に際して社員に宛てたメッセージで、ベゾスは「発明し続けることの大切さ」を強調している。


こうしたメッセージも、アマゾンのイノベーション創出の能力を組織的に高める仕組みの一つだと言えるだろう。


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